米海軍がUFO報告を本物扱いした記念小説
以下、CNNの報道より:
映像は2017年12月〜18年3月にかけて公開されたもので、高速移動する長方形
の物体を、高性能赤外線センサーがとらえている。
このうち2004年に撮影された映像では、センサーがとらえた物体は急加速して画面の
左側に消えていた。センサーは物体の速度に追いつけず、再発見することはできなかった。
子供の頃からUFOが好きなので、こういうニュースはワクワクする。「軍のセンサーが追い付けない速度」って・・・
最近の米軍は変なモノが飛んでるのを見たら報告するように促す風潮へと変化している模様。
それまでは、「変なモノ飛んでました」と真面目に報告したばかりに頭おかしくなったと判断されて地上勤務へ追いやられ翼を折られた優秀な人材もきっといただろうな・・・そんなことを考えたら、ちょっとした物語が生まれた。
主人公は米軍のパイロット。市街地上空を飛行中、突然至近距離に現れた大きいUFOに対してとっさに回避行動をとり、理由を報告したら精神疾患扱いで地上勤務にされちゃった設定。多分、洋画の吹き替えにありがちなハスキーボイスだと思うw
👽本文
バーで知り合ったその優男は、俺の話を黙って聞いていた。
「・・・本当に至近距離だった・・・ああしなければ間違いなく街にも被害が出ていたから判断に後悔はしてない・・・パイロットとして死んだけどな」
イジメにも厳しい訓練にも耐え研鑽努力し続けた結末がこれ。誰が想像できただろう? いつしかやり場のない気持ちにいきり立ち荒むことすら疲れた俺は、カウンターで飲みかけのビール片手に力なく笑った。
・・・いくら相手が聞き上手だからってこれは引くだろう。酔った覚えはないが、気付けばさっき知り合ったばかりの相手に、話すつもりの無かったことまでこぼしている。まるで口が勝手に動いているみたいだ。キチ〇イ扱いがオチだというのに、何やってんだ俺は。「はは。酔っ払いの冗談だ。忘れてくれ」
「・・・知ってるよ。君はイカレてない。・・・本当に飛んでたんだ」そいつは神妙なしたり顔で重々しくうなづいた。悪い奴じゃないみたいだが、ちょっと変わっていた。
「マスター、さっきの赤いやつお代わり。・・・意外といけるわコレ」
トマトジュースじゃねえか。
「いい話聞かせてもらったから、俺もとっておきの話してやるよ」ジョンと名乗ったそいつは、奇妙な表情で俺を見つめた。
「信じないかもしれないけど、あの時さ・・・俺もあそこにいたんだ。あんなギリギリで回避したのは見事だったよ。立て直し方もスマートだった」
・・・今なんて言った? よりによって、偶然入ったバーで俺は目撃者と会ってるのか!? 全身が総毛立ち手が震える。奴がグラスをUFOに見立て、ペンのキャップで俺の飛び方を表わした軌跡は正確だった。
だがあの日は、雲が多くて地上から空はほとんど見えてなかったはずだ。もっと晴れていればきっと目撃者がいたはずだと何度悔しがったことか・・・
「うそだろ・・・アレが見えてたのか!?」
「ふふ・・・『見えてたのか』はこっちのセリフだよ。驚いたなあ・・・ここにも見える奴がいるとは思わなかった。とうとう進化が始まったんだな・・・」
ちょっと何言ってるか分からない。
「アレは、君らとは少しズレた周波数の空間だから決してぶつからないし、君らには探知も撃墜も出来ない。見える奴もいない・・・と思ってバリア切ってたせいで、君に回避なんて余計な事させたのは俺のミスさ・・・優秀なのに、ほんと悪いことしちゃったなぁ。・・・ごめんよ」
・・・こいつ精神疾患か?
「マスター勘定頼む。彼の飲んでる変な黄色いの・・・とにかくそれは俺のおごりだ」
そいつは紙ナプキンに素早く何かを描いた。俺の見たアレそっくりのものを。ドヤ顔で「ジョン画伯」とかサインしてる。
「世界は、君らが想像するよりもはるかに広大でね。この星のしょうもない固定観念なんて世界や可能性をちっぽけでつまらなくするだけさ」
「会えてよかったよ。うそじゃないぜ。またな☆」
茶目っ気たっぷりに言うと、そいつは描いたモノを俺に渡し、あっけにとられる俺を残して店から颯爽と消えた。
一月後、俺は相変わらず憂鬱で退屈で孤独な地上勤務をしていた。同僚達には陰で「翼の折れたキチ〇イ」とか呼ばれているらしい。
あの絵も、職場も、何故か捨てられずにいる。未だに折り合いも説明もつかないモヤモヤと共に。未練がましいな。
「あー・・・それ終わったらちょっと来てくれ」腫れ物に触るような態度の上司。とうとうその日が来たか。驚きはしない。
ろくでなしの親父は去年死んだそうだから、一旦故郷へ戻ってみようか・・・
「・・・実は、君に新しい辞令が来ている」気味悪そうな顔をした上司が、クソまずいコーヒーを飲みながら一枚の紙を寄越した。
グルーム・レイク空軍基地・・・新型ステルス機開発のテストパイロット・・・まず目に入ったのはそんな単語だった。内容は理解できたが、今の自分と結びつかない。
「お前・・・上層部に知り合いでもいるのか?」「まさか」「だよな」上司の苦い顔は、コーヒーのせいじゃない。
「・・・人違いでは?」
「いや、間違いなくお前なんだ。関係者がぜひお前をとな・・・お前が地上勤務になった経緯も知ってたぞ」
幻覚と妄想で地上勤務になった人間をテストパイロットに?
「とりあえず行け。・・・一応また飛べるみたいだな(一回きりかもしれんが)」
信じがたいし裏がありそうで気持ち悪いが、それでも湧き上がる喜びや好奇心とすがるような思いは抑え切れなかった。
その日の夜、俺は眠れずに再度辞令書をまじまじと見つめ直した。
この時になってやっと、何もなかったはずの裏面が奇妙に光っているのに気付いた。
「見る目があって優秀に飛べる君を推薦したよ ジョン画伯より」
どんな仕組みかなのか、光って浮かび上がる文字には、確かにそう書いてあった。自画像付きで。
俺は朝まで気絶した。
・・・こうして、俺のあだ名は「翼の折れたキチ〇イ」から「天翔けるキチ〇イ」になった。
妄想終わり。
友達に見せたら「これBL?」って言われたw
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