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2010年8月 6日 (金)

いけにえの英雄

原爆投下機長の息子、大使派遣に不満あらわ

広島に原爆を投下した米軍のB29爆撃機「エノラ・ゲイ」の元機長ポール・ティベッツ氏(故人)の息子、ジーン・ティベッツ氏は5日、オバマ政権が広島平和記念式典にルース駐日大使を出席させたことに、「行かせるべきではなかった」と不満をあらわにした。  ジーン氏はCNNテレビの報道番組に自ら電話をかけ、「(日本に対する)無言の謝罪と受け取られかねない」と政権の決定を批判し、「原爆投下で戦争終結が早まり、多数の命が救われた。我々は正しいことをした」との父の生前の主張を述べた。

そこでお父ちゃんが出てくるのは何故? お父ちゃんに結びつくのは何故?  
多分、「大使が式典に出たらお父ちゃんが悪者になっちゃう」という不安感だ。その不安感は、特定の誰かに全ての責任を背負わせて尻尾切りをして済ませてしまう風潮の裏返しな気がする。そういう風潮を何度も繰り返し、そういう風潮が染み付いてるから生まれる不安感な気がする。
それと、 アメリカでお父ちゃんを英雄として祭り上げちゃったことが、お父ちゃんや息子達に重い何かを背負わせてしまったんじゃないかと思った。
「彼のおかげ」ってことは、「彼のせい」ってことにもできるわけで。
祭り上げて、イザとなったら「英雄」から「彼のせい」にして全てをおっかぶせて終わりにする「尻尾切り」と裏表一体なんじゃないだろうか。
(人類の罪を全て背負って死んだとされるあの大工の倅もそうやってヒーローになった?)

で、オバマが核廃絶を宣言し大使が式典に出た今が「イザ」じゃないかと。本人と遺族は前からその日が来ることを恐れて原爆投下の正当性を主張する形で自己防衛し、機長本人は航空ショーでキノコ雲を演出するほど正当性アピールに固執してきたのだろうか?

あの時命令を受けた機長は、アメリカが祭り上げてしまったせいでアメリカ人のみならず被爆者達からも特別な目で見られるようになってしまった。
「特別」なのはお父ちゃんだろうか? 原爆だろうか? それとも別の何かだろうか? そもそも「特別」なんて存在するのだろうか?

個人的に、こういうテーマは誰かを「特別」にしない方がいいと思う。結局、「街を一瞬で焼き払う武器」という発想を思いつくに至るような、強い武器を求める生き方を人間が大昔から歴史のなかで何度も選んできたことが悲劇の母体になってきたように見える。人間が強い武器を求める生き方を始めた大昔から悲劇ははじまり、世代を重ねるにつれ悲劇の規模が大きくなってきた。悲劇は大きく育っていった。
人の歴史が背負う十字架。どんどん大きくなって行く十字架は、重すぎて特別扱い(スケープゴート)された人間の一人や二人じゃ背負いきれない。

人間が歴史のなかで受け継いできた強い武器を求める生き方が核兵器を生み、「英雄ポール・ティベッツ大佐(機長)」を生んだのだとしたら、エノラさんの息子(機長)を「特別」にして十字架を背負わせるのは相応しくない。息子を「エノラさんに生まれた悲劇のリトルボーイ」にすべきではない。
(彼に十字架を押し付ければ押し付けるほど、彼や遺族は自分を守るために原爆投下肯定へと追い詰められる。皆の手で追い詰められる)

悲劇の母体・・・広島に落とされた原爆をお腹に宿した機体、エノラ・ゲイ号の名前は、機長のお母さんの名前だ。 世代を重ねて受け継がれた「強い武器を求める生き方」が母体になって、新たな悲劇である小さな男の子「リトルボーイ」が広島に生み落とされたんだろう。
その悲劇はさらに大きく育ち、2日後には長崎で「ファットマン」になった。

戦いで悲劇が起きた時に、人は悲劇やそれを起こした者を憎むようになって、そこから悲劇を連想させるもの全般に対する憎しみが生まれたり、憎き悲劇(またはそれを連想させるもの)をやっつけたい気持ちや憎き悲劇から自分たちを守ろうとする気持ちが生まれたんだろうか。
それが、強い武器を欲しがる生き方につながって更なる悲劇の繰り返しになるのかも・・・

でも、本当に憎いのは、具体的な悲劇やそれを起こした者じゃなくて、長い間自分たちが選んできた強い武器を求める生き方そのものかも知れない(憎むだけではその生き癖を変えられないのだが)。

強い武器を欲しがること。誰の中にもそれにつながりうる因子が眠っているので、誰もが十字架の一部を担う可能性を秘めている。
けれど、十字架ってのはどれほど体に重く密着してようが、決して体の一部じゃない。

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