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2006年8月11日 (金)

絵を描いてる時の君が好き③

B太の声のニュアンスは、「しばらく距離を置く」というよりも、「一旦別れよう」という意味に近かった。
A子は何も言わなかった。最初はひどく不安でドキドキした。でもよく考えて落ち着こうとした。
「自分の時間も大切にするから、重くならないようにするから、今まで通りでいたい。離れたくない」
・・・と、言おうと思えば言えた。でも言わなかった。その方が楽だと気付いたから。A子はくたくただった。現状に執着していたら、付き合い方を変えられそうにない。どんなに疲れても、執着が自分の時間を省みるのを邪魔してしまう。そして今みたいな付き合い方を続けていれば、ずっと疲れてなきゃいけなくなると思った。無理し続けることが止められないままになると思った。B太もそういう付き合い方は疲れるんだろう。
今同意すれば、少しの間切なくて辛かったり落胆したりするかもしれない。けれど二人とも疲れきってダメになるよりよほどましだ。深刻な犠牲が出る前に・・・
既に、無理をした反動が来ている。そのせいか、B太の言うことに反発する気力はなかった。今は何よりよく休んで、自分を立て直したかった。そっちに集中したいのだと思う。
不思議と寂しさは感じなかった。嫌われたわけではないのだと、わかるから。むしろその逆だ。
・・・・・・沈黙がややあって、A子はB太の言うことに同意した。それでも後で後悔するかなと思うと、勇気が要った。同意しても、寂しく思わなくていいんだよね?
B太は予想以上にすんなり話が終わったことが少し意外だったけれども、ほっとした。沈黙の間、泣くかなと考えて緊張していた。冷たく突き放されたと思われただろうか? 
B太はするすると器用にりんごの皮を剥きだした。食べやすい大きさに切って、ようじを刺して、二人で黙ってたべた。たべおわった後、
「・・・・・・それでもまた会える?」「当たり前じゃん。」

「じゃ、早く元気になれよ。またね」
ドアの間からひらひらさせた手だけを最後に残して、B太は去っていった。

つづく

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