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2006年7月30日 (日)

絵を描いてる時の君が好き①

この前の記事を書いた後になんとなく思いついたお話。

           ◇    ◇    ◇    ◇    ◇    ◇

将来は画家を目指している美大生のA子。普段はせっせと絵を描いたり、コンぺに作品を応募したりして、チャンスを求めて活動中だ。まだまだ卵のA子は、将来自分の才能や感性を発揮して、人々にその作品を楽しんでもらうという夢に向かって走り始めたばかりだった。目下の課題は「評価を気にして自分の描きたいものを素直に描くことが難しい」ということ。授業で何度か満足して描いた絵をこき下ろされたことが少々トラウマになっているのかもしれない。
美大のゼミが始まったばかりの頃、A子には気になる異性が出来た。同じゼミでやはり画家を目指しているB太だ。A子はB太の描く絵が好きだった。高く評価できると思っていたし、「この人ならきっといつか画家として成功するに違いない」と思っていた。複数のコンテストで入賞したこともある。先生の評価もまずまずだ。もとより、「評価を恐れず自分の描きたいものを好きな方法で堂々と描いている」ところをすごく尊敬していた。B太はB太で、A子の絵には密かに一目置いており、彼女はこれからもっといい絵が描けるだろう思っていた。もっと、「描きたい絵」が描けるようになればいいのに、とも思っていた。彼女が絵の中に時折垣間見せる感性に、惚れていた。そんな感性を持った彼女に、惚れていた。だから、彼女が描きたい絵(思い切り感性を出した絵)を描かないことを(それが見られないことを)、もどかしく思っていた。
やがてA子とB太は様々なことを話すようになり、意気投合した。互いの絵のこと、感性のこと、将来の夢のこと・・・・・・二人は互いを奮い立たせるよいライバルでもあり、或いは見習うべき先輩であり、理解し励ましあえるような親友にもなった。A子にとって、他人の評価を恐れず自分の描きたいものを描ける上に、結果的にはよい評価を貰えているB太はちょっとしたカリスマ的存在だった。そんなB太が自分の絵を見て喜びや楽しみ・・・心地よさを感じてくれるのは、とても嬉しかった。B太も、感想を求めて普段はめったに人に見せない下書き段階の絵を自分に見せてくれることがあり、A子はそれが誇らしかった。出来上がりを想像して、とてもわくわくしたし、出来上がった作品はやっぱり良かった。B太が良い評価を貰うと、A子は自分のことのように嬉しかった。絵について、互いに参考になるコメントを出し合い、得ることが出来た。
二人とも、恋愛を含めた今までの人間関係を振り返ると、こんなに異性と意気投合したのは生まれて初めてのことだった。まるで他人じゃないみたい。
いつしか二人付き合うようになっていた。

A子は着々と夢に向かって進んでいるB太の側にいることで、自分も一歩夢に近づけるような気がしていた。それくらいB太を素晴らしいと感じていた。そのうち、俄然B太を応援したくなってきて、B太にかいがいしく尽くすようになっていった。
B太が初めて個展を開くチャンスを手にした時は、われを忘れるほど興奮し、舞い上がった。このチャンスを何としてでも成功させたい。A子は、自分の創作活動をそっちのけにして、個展の開催を成功にこぎつけるために奔走した。遠慮するB太に構わず、時には寝る間も惜しんで。その時は、B太に尽くすことだけで自分が満たされていた。
・・・・・・例え、いつの間にか自分の絵を描くことがおざなりになっていたとしても。
自分の創造性と感性をずっと無視して、自分の普段の生活ペースやテリトリーをずっと無視して、自分にしか出来ないことを、ずっと無視して。そのために知らず知らずのうちに溜まり続けていた疲れとストレスをずっと無視して、A子はB太に尽くしていた。今はちょっとくらい苦しくても、B太の個展が成功すれば、B太が夢に向かってどんどん近づいていければ、それも報われると思った。

B太の個展は、初めてにしてはかなりの好評を博して終わった。開催初日には地元のミニコミ誌の取材も受けた。
ギャラリー達はB太の作品を興味深げに見物し、驚き、楽しみ、心地よさを見出していた。授業では評価がイマイチだった作品も、B太は自信を持って展示し、ギャラリー達には結構受けていた。同じ美大の学生達はB太をうらやましく思い、或いは尊敬した。
個展が終わるまで、熱心すぎるほど手伝っていたA子は、個展の成功にほっとした。
ほっとしたら疲れがどっと出たのだろう。片付けが終わったあと、急な激しいめまいでA子は倒れてしまった。慌てたB太が自分の名前を呼んでいたけれど、返事ができないまま、A子の意識は体を抜け出してどこかへ飛んでいってしまった・・・・・・

つづく

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